Apple File System (APFS) が2017年の目玉
ファイルシステムとはコンピュータの基礎である
まもなく登場のiOS10.3でiOSから先行搭載
来週、iOS10.3がリリースされる予定です。
今回はiOSも現在利用のHFS+からApple File System(APFS)に変更されるのが大きな目玉になります。そこでファイルシステムとは何?と今回は少しまとめてみました。Mac、iPhoneユーザーに向けてのファイルシステムの説明になります。
少々、細かいので解りにくいですから、メリットだけ見て頂いても結構です。
ファイルシステムとは
コンピュータの中でデータをどう保存するか、それを決める管理方式の事を表します。そう、気にしないことです。黒子のような存在です。完全に裏方です。古くはDISK-BASICからDOS時代のFAT、MacintoshではMFSからSystem 3.1でHFSにそして、MacOS 8.1でHFS+にと改良されました。
WindowsではFAT16からFAT32そして、NTFS、ReFSまで変化しています。LinuxではEXT系でext4、SolarisではZFS等もあります。
マニアックであればBeOSで使われたBFSと色々とありますが、要は何かに保存するときに使う保存方法の事です。古くはテープ、そして、フロッピーディスク、HDD、MO、ZIP、CD-ROM、DVD-ROM等も全てファイルシステムを使って、データを保存しています。
もちろん、普段はユーザーが気にする事の必要ない事です。
HFS+からの移行
AppleではMacintoshでのHFSの利用からMac OS 8.1でHFS+に移行し、その機能を拡張しながら、今のmacOS SierraでもHFS+を利用しています。去年、2016年のWWDCでApple File System (APFS)の開発を発表しました。

大きくは1998年からの変更になるので、2017年に変更されれば、ほぼ20年ぶりの大幅改良になります。
なぜ、今、変更が必要なのか?
今までのファイルシステムの改良の歴史は保存容量増大がほぼメインの理由でした。最近ではこの状況が変わりつつあります。要求されているニーズが変わっているのです。主にハードウェアの形態の変化が影響しています。
- 暗号化が必須となっている
- SSDがメインになりつつある
- 64bit化が完了する
- メインメモリ搭載量が増えつつある
- デバイス間での連携が重要になる
上記の様に単純なコンピュータ(デスクトップ)での利用からノートPCからスマホ、タブレット、ウェアラブル端末という様にコンピュータの利用分野が広がって来ている中でファイルシステムに求められている機能が変化して来ているという状況です。
Appleは一時期、ZFSというOracleのファイルシステムを検討している状況がありました。しかし、結果は採用を見送りました。Appleの求めているファイルシステムでは無かったのだと思われます。Macも全てのラインナップがIntelのCPUになり、64bit化され、標準搭載メモリも8GB以上になってきております。iPhoneも前回の記事に書いた様に64bit化が進んでいます。

64bit化、マルチスレッドに対応している次世代ファイルシステムが必要になっています。ソフトウェアの進化がハードに追いついていない。そういう事かもしれません。
Appleが求めているファイルシステムの機能
- 強固な暗号化
- 低レイテンシー(遅延が少ない)
- 高速(無駄な処理を減らす)
- SSD最適化(消耗させない)
- 耐障害性の向上
- 柔軟なリソース管理(無駄を無くす)
挙げれば上記の項目です。
暗号化
1は今まで、File Vaultという機能でHFS+でも実現をしつつある。macOSでもiOSでも同等の機能は実現出来ている。これをより強固に高速に実現することが求められている。今までのFile Vaultの様にオプションでは無い。高速、省電力でこれを実現可能にする。
スピード
2はOSの反応速度に影響する。最近のOSはメモリを増やしても高速化しない。既に飽和しているからだ。一番のボトルネックはHDD、SSD等の外部保存機器へのアクセススピードが遅いからだ。CPUは並列処理が可能であり、アプリの切替も素早いが、データの読込、書込がマルチスレッドで効率良く動作していない。特にHFS+はほぼシングルスレッドで処理される。これがAppleのOSをもっさりさせる。
Appleはこの解決にBeOSのファイルシステム開発者を採用している。これには驚いた。BeOSは本当に同じMacintoshで動かしても早かった。同時にQuick Timeムービーを4つ動かしても滑らかに動作していた。同時期のMacintoshの漢字Talk 7.5はそうは動作しませんでした。ソフトウェアの作り方でこんなに違うのかと、驚いた記憶があります。Appleも今のハードウェア上でこの様なレスポンスを実現したいと考えているに違いない。マルチスレッドになったファイルシステムが今のOSのレスポンスを改善するだろう。iPhone,iPadで同じハードウェアで今まで使い切れていないその性能をソフトウェアの改善で開花されることが出来るかもしれません。
耐障害性
3、4、5はCopy on WriteやIn PlaceやTrimが関係するが、今までのファイルシステムより少ないう転送量で、より強固な耐障害性を実現して、私たちのデータを守ってくれます。
HFS+のMacではよく、ファイルシステムにエラーが発生します。
致命的にはならないエラーで自動的に修正する機能もあるが、突然のフリーズや間違った操作をした場合、ハードウェアの問題ではなくソフトウェア(ファイルシステム)の問題だけでも致命的になり、最悪の場合はデータを損失します。
Apple File Systemにより、ハードウェア故障での障害以外の原因が少なくなると考えられます。
容量の削減
6は重複削除という機能がすぐには実現しないので大幅には変わらないですが、スナップショットというバックアップの機能は実現されますので、ある程度の無駄容量削減はすぐに効果が現れるでしょう。また、パーテーションというHDD間での管理の方法も変わります。無駄な空き容量を活用できることになります。
将来的には他の連携デバイスから垣根を超えて、保存したデータを共有出来れば素晴らしいと思います。
どういうメリットがあるの?
今後、リリースされるiOS10.3では下記の様なメリットがあります。
- 暗号化がより強固になる
- レスポンスが上がる
- 少しだけ容量が増える
まだ、macOSではApple File System (APFS)への移行がされておりませんが、今後のmacOS 10.12.5でHSF+からの移行が可能になれば下記の様なメリットになります。
- 暗号化がより強固になる
- レスポンスが上がる
- HDDであっても耐障害性が強くなる
- TimeMachineでのバックアップが高速になる
今後の移行予定と期待する機能
完全にApple File Systemが標準搭載されるのは今年、WWDC 2017で発表されるだろうmacOS 10.13とiOS11であると思われます。現段階では移行期間です。iOS 10.3でApple File System (APFS)を載せたのは集大成として、過去のリソース(32bit機器)でもAPFSでアクセス可能にしておく為だと思われます。

今後、未来のmacOS,iOS,tvOS,watchOSでAPFSが標準搭載され、各デバイス間で無駄にリソースを使わず、保存した写真、音楽等を共有出来れば、現在の様に全てのデバイスに全てのデータを保存しなくてよくなる為、無駄に大容量が必要なこともなくなります。Apple IDで紐付けしたデバイス間ではSSDもHDDもファイルを全て閲覧可能であれば最高です。みんなのiPhoneで容量を食っている大半のものは写真、動画、音楽です。
外出中は低画素、低ビットレートの写真、動画、音楽で済ませ、容量を節約、帰宅後はmacOSかtvOS上で共有しているHDDから元データで高画質、高音質を楽しむ。その様なことがApple File Systemで実現してくれれば嬉しいです。
また、今まで以上に簡単に自分のデバイス上のファイルにアクセス可能になります。iCloudの拡張の様にmacOSやtvOS上のHDDに保存しているデータに、iPhone,iPadからアクセス可能になれば非常に便利です。iMac,Mac mini,Mac Pro,Apple TV上の外部HDDのファイルにシームレスでMacBookからアクセス可能になれば、MacBook,MacBookProで搭載するSSDは512GB以下で十分になります。
魔法の様に。気付かず、スムーズに
今年、2017年、移行します。今までのApple機器の所有ユーザーがメリットを享受出来ます。より大容量、高画質になる写真やムービーを安全、高速、快適に保存することが可能です。無料です。みんなが平等に享受出来ます。移行にはAppleらしくみんなが気付かない様に。そう、魔法の様に移行します。知らなくても良い、裏の黒子のファイルシステムを長々、説明してみました。
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